フリーランスエンジニアの社会保険、会社員との格差はどれくらい?『フリーランス白書2026』データで見る現状

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この記事は、会社員からフリーランスエンジニア・個人事業主として独立した(あるいは独立を検討している)方で、「なぜ自分だけ社会保険料の負担がこんなに重いのか」「会社員時代と何が違うのか」をデータで把握したい方向けです。結論から言うと、フリーランスの社会保険料は会社員のような労使折半(保険料を会社と本人が半分ずつ負担する仕組み)がなく全額自己負担であり、フリーランス協会の調査でも約7割が現行制度に不安を感じているという結果が出ています。これは単なる体感ではなく、制度設計そのものに起因する構造的な差です。以下、一次データと公的機関の情報をもとに、格差の中身と今後の制度動向を整理します。

この記事とID30・ID25記事との違い
本記事は「独立・退職時にどう手続きするか」(独立・退職時の社会保険・年金の切り替え完全ガイド)や「国民健康保険料をどう安くするか」(国民健康保険料が高い理由と安くする5つの方法)とは切り口が異なります。ここで扱うのは、会社員とフリーランスの社会保険制度に「そもそもどれだけの格差があるのか」を、フリーランス協会の最新調査データをもとに客観的に見る内容です。手続き方法や節約テクニックの説明は最小限にとどめ、格差の実態と背景に絞って解説します。

【結論】フリーランスの社会保険料は会社員の約2倍の実質負担、不安を感じる人は約7割

フリーランス協会が公開した「フリーランス白書2026」(社会保険に関する意識調査、2025年9月実施分)によると、現在の社会保険制度について「不安を感じる」と回答した人は68.2%にのぼり、「安心している」はわずか6.7%にとどまったとされています。この差の背景にあるのが、会社員には適用される厚生年金・健康保険の「労使折半」(保険料を勤務先の会社と従業員本人が半分ずつ負担する仕組み)が、フリーランス・個人事業主が加入する国民年金・国民健康保険(自営業者などが自分で保険料を全額納める公的医療保険・年金制度)には存在しないという制度構造です。同じ所得であっても、フリーランスは保険料を全額自己負担するため、実質的な負担感は会社員より重くなりやすい構造にあります。

【背景】フリーランス白書2026が示す、フリーランスの本音

フリーランス協会が2025年に実施した調査(フリーランス実態調査:2025年11月1日〜30日実施、社会保険に関する意識調査:2025年9月1日〜30日実施、2025年12月公開)を踏まえて2026年に公開された「フリーランス白書2026」では、フリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)施行後の実態とあわせて、会社員との社会保険格差についての意識調査結果が示されています。主なポイントは次の3点です。

  • 現行の社会保険制度に「不安を感じる」人が68.2%(「安心している」は6.7%)
  • 保障の充実のためであれば保険料が増えても構わないという回答が47.2%(現状維持希望31.2%、保障を削ってでも保険料を下げたい21.5%)
  • 「すべての働く人が自身の所得に応じた社会保険料を支払う制度」への賛成が70.2%(反対11.9%)

この結果から読み取れるのは、フリーランス側は現状の負担の重さに不満を抱えつつも、「フリーランスだけ優遇してほしい」という単純な話ではなく、雇用形態にかかわらず所得に応じて公平に負担する制度への支持が強いという点です。実際、保険料が上がってでも保障を厚くしてほしいという回答が最多である点は、単なる負担軽減要求ではなく、将来の保障(医療・年金)への不安の裏返しと見ることができます。

【比較】フリーランスと会社員、社会保険制度はここが違う

まず前提として、会社員(厚生年金・健康保険の被保険者)とフリーランス・個人事業主(国民年金・国民健康保険の被保険者)とでは、加入する制度自体が異なります。厚生労働省の資料によれば、国民年金の被保険者は3区分に分かれ、フリーランスや個人事業主、学生などは「第1号被保険者」、会社員や公務員は「第2号被保険者」に分類されるとされています。両者の主な違いを表にまとめました。

項目 フリーランス・個人事業主(国民年金・国民健康保険) 会社員(厚生年金・健康保険)
年金制度 国民年金(第1号被保険者) 厚生年金(第2号被保険者)
医療保険 国民健康保険(自治体運営が中心) 健康保険(協会けんぽ・組合健保など)
保険料の負担方法 全額自己負担 労使折半(会社と本人が半分ずつ負担)
厚生年金保険料の目安 該当なし(国民年金は定額制) 月収の18.3%(労使折半のため本人負担は9.15%)とされる
年金の上乗せ部分 基礎年金のみ(付加年金・iDeCo等で任意上乗せ) 基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)
傷病手当金・出産手当金 原則なし(自治体の任意給付を除く) 健康保険から支給される
配偶者の扱い 配偶者分も別途保険料が発生する場合がある 扶養条件を満たせば配偶者(第3号被保険者)の保険料負担なし

特に注目したいのが「労使折半」の有無です。厚生労働省の資料によれば、厚生年金保険料率は月収の18.3%とされ、これを会社と従業員が折半するため、会社員本人の実質負担は9.15%相当にとどまるとされています。一方、フリーランスが加入する国民年金保険料は定額制(所得に連動しない)であり、国民健康保険料は自治体ごとの算定基準に基づき所得に応じて按分(一定の基準に応じて金額を割り振ること)されて決まりますが、いずれも折半してくれる「雇用主」が存在しないため、計算された保険料を全額自分で納める必要があります。加えて、健康保険には傷病手当金(病気やケガで働けない期間の所得を補償する給付)や出産手当金がありますが、国民健康保険には原則としてこれらの制度がなく、フリーランスは病気やケガで働けなくなった際の収入減少リスクにも自分で備える必要があります。

【注意点】「会社員に戻れば得」と単純化できない理由

ここまで見ると「フリーランスは損、会社員は得」という単純な結論に飛びつきたくなりますが、注意点が2つあります。

1つ目は、会社員の労使折半分(会社が負担する保険料)は、広い意味で人件費の一部として会社側のコストに計上されており、フリーランスの報酬(業務委託料)にはあらかじめこうした保険料相当分が上乗せされているとは限らない、という点です。同じ額面の「年収」や「売上」であっても、会社員の給与とフリーランスの報酬では、そもそも保険料負担を織り込んだ設計になっているかどうかが異なります。

2つ目は、フリーランス白書2026の調査結果が示すように、フリーランス側の多数派は「制度をフリーランスに有利に変えてほしい」のではなく、「働き方にかかわらず所得に応じて公平に負担する制度」を支持しているという点です(賛成70.2%)。これは、将来的に社会保険制度そのものが雇用形態を問わない方向へ見直される可能性を示唆するデータであり、フリーランスエンジニアとしても制度動向を継続的にウォッチしておく価値があります。

要点まとめ
・フリーランス(個人事業主)は国民年金・国民健康保険に加入し、保険料は全額自己負担
・会社員は厚生年金・健康保険に加入し、保険料は労使折半(会社と本人で折半)
・フリーランス白書2026では、社会保険制度への不安が68.2%、保険料増加を許容できるが47.2%、所得に応じた公平な負担制度への賛成が70.2%(いずれもフリーランス協会調べ、2025年実施調査)
・「フリーランスだから損」と単純化せず、報酬設計や制度動向の両面から捉えることが重要

【今後の見通し】制度はどう変わっていく可能性があるか

フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の施行によって、フリーランス・個人事業主を含む働き方全般への社会的な関心は高まっています。フリーランス白書2026の調査でも、所得に応じた公平な社会保険料負担制度への支持が7割を超えていることから、雇用形態にかかわらず所得ベースで社会保険料を設計する議論が今後も続くと見られます。ただし、制度改正の時期や具体的な内容については現時点で確定した情報はなく、断定はできません。フリーランスエンジニアとしては、公的な発表や一次情報を定期的に確認しつつ、当面は自分自身で国民年金・国民健康保険の負担に対応できる備え(付加年金、国民年金基金、iDeCo、所得補償保険の検討など)を進めておくのが現実的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. フリーランスと個人事業主で社会保険の扱いは違いますか?

A. 基本的に同じです。税務上・社会保険上、フリーランスも個人事業主も会社に雇用されていない働き方であれば、原則として国民年金・国民健康保険に加入します。「フリーランス」は働き方の呼称、「個人事業主」は税務上の区分という違いはありますが、社会保険の加入区分としては同様に扱われます。

Q2. フリーランスは厚生年金に入れないのですか?

A. 原則として、フリーランス・個人事業主本人は厚生年金の対象にはなりません(厚生年金は会社員や公務員など「第2号被保険者」が対象です)。ただし、法人化して自分を役員として厚生年金に加入させる、あるいは従業員を雇って厚生年金適用事業所にするといった方法で加入できるケースもあります。

Q3. フリーランスの社会保険料が会社員より高く感じるのはなぜですか?

A. 主な理由は、会社員には適用される労使折半(保険料を会社と本人で半分ずつ負担する仕組み)がフリーランスにはなく、算定された保険料を全額自己負担する必要があるためとされています。同じ所得水準でも、負担の実感が重くなりやすい構造です。

Q4. フリーランス白書2026はどこで確認できますか?

A. フリーランス協会の公式ブログ(フリーランス協会ニュース)で調査結果の概要が公開されています。詳細な調査対象人数や設問全文については、協会が公開する白書本体(PDF等)を確認することをおすすめします。

Q5. 今後、フリーランスの社会保険制度は改善されますか?

A. フリーランス白書2026の調査では、所得に応じて公平に社会保険料を負担する制度への支持が7割を超えており、制度見直しの議論が進む可能性はあります。ただし、具体的な改正時期や内容は本記事執筆時点(2026年9月)で確定しておらず、断定はできません。今後の公的発表を注視する必要があります。

フリーランスエンジニアとして働く以上、社会保険の「格差」は避けて通れないテーマです。ただし、フリーランス白書2026のデータが示すように、多くのフリーランスが望んでいるのは特別扱いではなく、働き方にかかわらず公平に負担する制度です。まずは現状の制度と数字を正しく理解し、そのうえで自分に必要な備え(年金の上乗せや所得補償など)を検討していきましょう。独立・転職にともなう具体的な手続きについては、独立・退職時の社会保険・年金の切り替え完全ガイドもあわせてご確認ください。

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