会社員から年の途中でフリーランスになった年の確定申告【結論】給与所得と事業所得はこう書く

「4月に退職してフリーランスエンジニアとして独立したけれど、確定申告はどう書けばいいのか分からない」——そんな声をよく聞きます。

結論から言うと、退職前の給与(給与所得)と、開業後の売上(事業所得)は、1枚の確定申告書にまとめて記入すれば大丈夫です。会社員時代の源泉徴収票と、開業後の帳簿(収支内訳書または青色申告決算書)の両方を用意し、それぞれの所得を確定申告書の該当欄に転記するだけで申告できます。

ただし、以下の3点でつまずく人が多いので、この記事ではこの3つに絞って解説します。

この記事の要点

  • 給与所得と事業所得は「合算」ではなく「それぞれ別欄に記入し、最後に合計」する。源泉徴収票の数字をそのまま転記すればよい。
  • 社会保険料控除は「前職の給与天引き分」+「退職後の国民年金・国民健康保険の支払い分」を合算して1つの欄に書く。
  • 住民税は年の途中で「特別徴収(給与天引き)」から「普通徴収(自分で納付)」に切り替わる。退職月によって手続きが変わるため要確認。

【結論】年の途中で退職してフリーランスになった年は「確定申告書」1枚に両方書く

まず前提を整理します。給与所得とは、会社員として勤務先から受け取った給料・賞与にかかる所得のことです。事業所得とは、個人事業主(フリーランス)として自分の事業から得た売上から経費を差し引いた所得のことです。「フリーランス」も「個人事業主」もここでは同じ意味で使います(税務上は「事業所得を得る人」という括りで扱われます)。

年の途中で退職して独立した場合、1年間の所得の中に「給与所得」と「事業所得」の両方が存在します。この場合でも、確定申告書は1種類(1枚)で構いません。国税庁の確定申告書には所得の種類ごとに記入欄が分かれており、給与所得は「給与」欄に、事業所得は「事業」欄に、それぞれ収入金額と所得金額を記入し、最終的にすべての所得を合計して税額を計算する仕組みになっています(出典:国税庁「給与所得」No.1400、「事業所得の課税のしくみ」No.1350)。

早見表:給与所得と事業所得、それぞれ何を用意するか

所得の種類 期間の目安 用意する書類 確定申告書での扱い
給与所得 退職日まで(例:1月〜4月分の給与) 前職から発行される「給与所得の源泉徴収票」 源泉徴収票の「支払金額」「源泉徴収税額」等をそのまま転記
事業所得 開業日以降(例:5月〜12月分の売上) 帳簿にもとづく「収支内訳書」(白色申告)または「青色申告決算書」(青色申告) 売上から必要経費を差し引いた所得金額を記入

青色申告か白色申告かで迷っている場合は、以下の記事で比較しているので参考にしてください。

白色申告と青色申告、フリーランス1年目はどっちがいい?

【注意点】給与所得は「源泉徴収票の数字をそのまま転記」でよい

会社員時代の給与所得について、自分で経費計算をする必要はありません。源泉徴収票に記載された「支払金額」(年収)をもとに、法律で定められた計算式で給与所得控除(給与所得者の必要経費に相当する、収入金額に応じて一律に決まる控除)が自動的に差し引かれ、給与所得の金額が算出されます(出典:国税庁「給与所得」No.1400)。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、源泉徴収票の数字(支払金額・源泉徴収税額・社会保険料等の金額など)を画面の指示通りに入力するだけで、給与所得控除後の金額を自動計算してくれます。手計算する必要はありません。

なお、給与所得控除の具体的な金額(収入に応じた控除額の刻み)は法改正で変わることがあるため、最新の金額は必ず国税庁の該当ページ(コード1410)で確認してください。この記事では具体的な控除額の断定は避けます。

STEP:申告書への記入手順(作成コーナー利用の場合)

STEP やること
STEP1 「給与所得」の入力画面で、源泉徴収票の内容をそのまま入力する
STEP2 「事業所得」の入力画面で、収支内訳書または青色申告決算書の内容を入力する(先に決算書を作成しておく)
STEP3 「所得控除」の入力画面で、社会保険料控除・国民健康保険料・生命保険料控除などをまとめて入力する
STEP4 給与所得+事業所得の合計から所得控除を差し引き、税額が自動計算されることを確認する
STEP5 源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額」(給与から天引きされた所得税)が、納めすぎの税金として還付計算に反映されているか確認する

源泉徴収票の「原本」を確定申告書に添付する必要は、e-Taxで申告する場合は基本的にありません。ただし、書面提出の場合の取り扱いは年度によって変わることがあるため、手元に保管し、必要に応じて提示できるようにしておきましょう。

【注意点】社会保険料控除は「前職の天引き分」と「退職後の支払い分」を合算する

ここが最も間違えやすいポイントです。社会保険料控除とは、健康保険・厚生年金・国民健康保険・国民年金などの保険料を、その年に実際に支払った金額の全額を所得から差し引ける控除のことです(出典:国税庁「社会保険料控除」No.1130)。

年の途中で退職した人は、1年のうちに次の2つのフェーズを経験しています。

  • 会社員期間:給料から天引きされた「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」
  • 退職後(フリーランス期間):自分で納付した「国民健康保険料」「国民年金保険料」(任意で国民年金基金や付加保険料を払っていればそれも対象)

これらはすべて合算して、確定申告書の「社会保険料控除」欄に1つの金額としてまとめて記入します。国税庁のタックスアンサーによれば、控除の対象となる社会保険料は健康保険・国民年金・厚生年金保険など複数の種類にわたり、「その年に実際に支払った金額または給与から差し引かれた金額の全額」が対象です(出典:国税庁 No.1130)。

比較表:会社員期間と退職後で変わる社会保険料

項目 会社員期間 退職後(フリーランス期間)
健康保険 健康保険(会社の組合健保・協会けんぽ等)/給料天引き 国民健康保険、または任意継続被保険者制度/自分で納付
年金 厚生年金保険/給料天引き 国民年金/自分で納付(納付書・口座振替)
雇用保険 雇用保険料/給料天引き 対象外(フリーランスは原則加入しない)
確定申告での扱い 全期間分を合算して「社会保険料控除」欄に1つの金額で記入

金額の確認方法は次の通りです。

  • 会社員期間の天引き分は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に記載されています(雇用保険料も含まれているのが一般的ですが、内訳の扱いは源泉徴収票の様式によって異なる場合があるため、不明な場合は発行元の会社に確認しましょう)。
  • 国民健康保険料は、市区町村から送られてくる納付証明書や、通帳・口座振替の記録で年間支払額を確認します。
  • 国民年金保険料は、日本年金機構から送られてくる「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」で確認できます。この証明書は確定申告の添付書類として必要になる場合があるため、なくさず保管してください。

※任意継続被保険者制度(退職後も元の健康保険を任意で継続する制度)を選んだ場合、保険料は全額自己負担になりますが、社会保険料控除の対象にはなります。国民健康保険との保険料比較は、退職前に自治体・健保組合へ確認することをおすすめします。

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【注意点】住民税は「特別徴収」から「普通徴収」への切り替えタイミングに要注意

特別徴収とは、住民税を会社が給料から天引きして本人に代わって納付する仕組みのことです。普通徴収とは、納税者自身が市区町村から送られてくる納付書(または口座振替)で住民税を直接納める仕組みのことです。

会社員のあいだは特別徴収でしたが、退職すると天引き元がなくなるため、多くの場合は普通徴収に切り替わります。切り替えのタイミングと方法は、退職する「月」によって異なります。この点は自治体・勤務先の実務運用によって差が出ることがあるため、詳細は必ず退職する会社の総務・経理担当者、または居住地の市区町村の住民税担当窓口に確認してください(この記事では一般的な傾向のみを紹介し、断定は避けます)。

条件早見表:退職時期と住民税の徴収方法(一般的な傾向)

退職時期の目安 一般的な扱い 注意点
1月〜5月に退職 その年5月分までの残額が、退職月の給与や退職金から一括で「一括徴収」されるのが原則的な運用 最後の給与だけでは天引きしきれない場合もあるため要確認
6月〜12月に退職 「一括徴収(残額をまとめて給与天引き)」と「普通徴収への切り替え(自分で納付書払い)」を本人が選べる運用が一般的 選択方法は勤務先経由の手続きになるため、退職前に会社へ意思表示が必要
普通徴収に切り替わった場合 市区町村から納付書が届き、年4回(6月・8月・10月・翌年1月が目安)に分けて自分で納付 納付書の到着時期・回数は自治体により異なる

フリーランスになると収入が不安定になりやすい時期でもあるため、「いつ・いくらの住民税納付書が届くか」を把握しておくことが、資金繰り上とても重要です。前年(会社員時代)の所得をもとに計算された住民税は、独立直後の売上が少ない時期に請求が来ることもあるため、退職前にある程度の納税資金を確保しておくと安心です。

FAQ:よくある質問

Q1. 確定申告書は給与所得用と事業所得用で2枚に分けて出すのですか?

A. いいえ、分ける必要はありません。1枚の確定申告書の中に「給与」「事業」それぞれの記入欄があるので、そこに記入すれば1つの申告書で完結します。

Q2. 源泉徴収票を紛失してしまいました。どうすればいいですか?

A. 退職した会社の総務・経理担当に再発行を依頼してください。源泉徴収票は退職者に発行する義務があるとされているため、通常は再発行に応じてもらえます。年末までに届かない場合は早めに連絡しましょう。

Q3. 国民年金保険料の控除証明書が届く前に申告してしまっても大丈夫ですか?

A. 証明書が手元にない状態での申告は避け、届いてから申告するのが基本です。日本年金機構からの控除証明書は例年秋以降に発送されることが多いため、届いてから内容を確認し、実際に支払った金額を正確に記入してください(発送時期は年によって変わる可能性があるため、届かない場合は日本年金機構に確認しましょう)。

Q4. 事業所得が赤字だった場合、給与所得と相殺できますか?

A. 一定の要件のもとで、事業所得の赤字を給与所得など他の所得と損益通算(黒字の所得から赤字を差し引くこと)できる場合があります。ただし赤字の内容や申告方法によって扱いが変わるため、個別の判断が必要です。不安な場合は税務署や税理士に確認することをおすすめします。

Q5. 住民税の普通徴収への切り替え手続きは自分でする必要がありますか?

A. 基本的には退職する会社が市区町村に届け出る形で手続きが進みますが、一括徴収か普通徴収への切り替えかを本人が選ぶ場面があります。退職前に会社の担当者へ希望を伝えておきましょう。

まとめ

会社員から年の途中でフリーランスエンジニアになった年の確定申告は、「給与所得」と「事業所得」を1枚の確定申告書にそれぞれ記入し、社会保険料控除は前職分と退職後分を合算する——この2点さえ押さえれば、決して難しいものではありません。加えて、住民税の普通徴収への切り替えタイミングを把握しておけば、独立後の資金繰りで慌てずに済みます。

確定申告そのものが初めてという方は、以下の記事もあわせて確認しておくとスムーズです。

確定申告、初めてでもできるやり方ガイド
白色申告と青色申告、どっちがいい?
請求書の書き方・源泉徴収の計算方法

不明点がある場合は、自己判断で進めず、税務署や税理士への確認も検討してください。制度や控除額は年度によって変わることがあるため、申告時には必ず国税庁の最新情報もあわせて確認しましょう。

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