フリーランスエンジニアも労災保険に入れる?特別加入制度の仕組みと入り方

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「フリーランスエンジニアは労災保険に入れない」と思っていませんか。結論から言うと、2021年9月以降はフリーランスエンジニアも労災保険の「特別加入制度」を使って加入できます。理由は、厚生労働省が同年、情報処理システムの設計・開発などに携わる人を特別加入の対象に正式に追加したからです。ただし個人が労働局へ直接申し込むことはできず、特別加入団体を経由した手続きが必須という点に注意が必要です。本記事では対象範囲・保険料の仕組み・加入手順を、厚生労働省の一次情報にもとづいて整理します。

そもそも労災保険の「特別加入制度」とは

労災保険(労働者災害補償保険)は本来、会社に雇われている「労働者」を保護するための制度です。業務委託で働くフリーランスは労働基準法上の労働者にあたらないため、原則として対象外でした。

ただし厚生労働省は、業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護するのがふさわしい人については、任意で労災保険に加入できる「特別加入制度」を用意しています。中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4区分があり、フリーランスエンジニアは「特定作業従事者」という区分に含まれます。

フリーランスエンジニアも対象に——2021年9月からの追加

厚生労働省の発表によると、令和3年(2021年)9月1日から、労災保険法施行規則等の改正により「ITフリーランス」が新たに特別加入の対象になりました。根拠となるのは「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第123号)」です。

対象となる作業の範囲は、厚労省の資料で次のように定義されています。

  • 情報処理システム(ネットワークシステム・データベースシステム・エンベデッドシステムを含む)の設計、開発(プロジェクト管理を含む)、管理、監査もしくはセキュリティ管理その他一体的な企画にかかる作業
  • ソフトウェアやウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む)、管理、監査、セキュリティ管理もしくはデザインその他一体的な企画にかかる情報処理の作業

つまり、システム開発・アプリ開発・インフラ構築・Web制作など、多くのフリーランスエンジニアの業務が該当し得るということです。制度上の区分名は「特定作業従事者」で、労災保険法施行規則第46条の18第8号に定められています。

ここまでの要点

・2021年9月1日から情報処理システム開発などの作業従事者が特別加入の対象に追加された

・区分は「特定作業従事者(第二種特別加入者)」で、一人親方等とは異なる枠組み

・加入できるのは、あくまで届け出た情報処理関連の作業に限定される

加入するにはどうする?——特別加入団体を通じた申請が必須

特別加入で最も誤解されやすいのが、個人が単独で労働局に申請することはできないという点です。厚生労働省・労働局の資料では、特定作業従事者の「申請を行う者」は本人ではなく特別加入団体と明記されています。

流れとしては、次のようになります。

  • 情報処理関連の作業を対象にした特別加入団体(例として厚労省の検討資料では一般社団法人ITフリーランス支援機構が想定団体として挙げられています)に加入する
  • 団体が申請者を取りまとめ、「特別加入申請書」を所轄の労働局長へ提出する
  • 労働局長の承認を受けて、申請日の翌日から30日の範囲内で本人が希望する日が加入日になる

団体によって年会費や事務手数料、対応エリアが異なるため、複数の団体の情報を比較してから選ぶのが安全です。次章の保険料の仕組みとあわせて確認しましょう。

保険料はいくら?——給付基礎日額と保険料率の仕組み

特別加入の保険料は、給与のように実際の収入から決まるわけではありません。本人が希望する「給付基礎日額」を労働局長が決定し、そこに保険料率を掛けて算出します。

労働局の資料によれば、給付基礎日額は3,500円から25,000円までの範囲で選択でき、年間保険料は次の式で計算されます。

年間保険料 = 給付基礎日額 × 365日 × 保険料率

情報処理関連の特定作業従事者(区分番号「特26」)の第二種特別加入保険料率は、厚生労働省の保険料率表(令和6年11月1日施行)で1,000分の3(0.3%)と定められています。この率をもとに試算すると、次のようになります。

給付基礎日額と年間保険料の目安(保険料率1,000分の3で試算)
給付基礎日額 年間の算定基礎額(日額×365) 年間保険料の目安 月あたりの目安
3,500円 1,277,500円 約3,833円 約320円
5,000円 1,825,000円 約5,475円 約456円
8,000円 2,920,000円 約8,760円 約730円
10,000円 3,650,000円 約10,950円 約913円
16,000円 5,840,000円 約17,520円 約1,460円
25,000円 9,125,000円 約27,375円 約2,281円

ここに、加入する特別加入団体ごとの年会費・事務手数料が別途かかる点も考慮しておきましょう。給付基礎日額は、休業したときの補償額や将来の障害・遺族給付の算定基礎にもなるため、普段の収入や生活費とのバランスで選ぶのが基本です。

補償される範囲——業務災害・通勤災害、ただし対象作業に限定

特別加入者も、労働者と同じように業務災害(仕事中のケガ・病気)と通勤災害(移動中の事故)の両方について、療養・休業・障害・遺族などの保険給付を受けられます。

ただし注意したいのは、補償の対象になるのは、特別加入の際に届け出た「情報処理に係る作業」に起因する災害に限られるという点です。同じフリーランスでも、たとえば動画編集や執筆など、届け出た作業の範囲外の業務中に起きた事故は補償の対象外になり得ます。複数の業務を掛け持ちしている人は、どの作業を対象に加入するのか、加入前に特別加入団体へ確認しておくと安心です。

一人親方や他の特別加入との違い

特別加入制度には、建設業の一人親方など「事業」単位で加入する枠組みと、フリーランスエンジニアのように「作業」単位で加入する枠組みがあります。この違いを整理すると次のとおりです。

特別加入区分の比較(一人親方等・特定フリーランス事業・情報処理関連の特定作業従事者)
区分 根拠条文 加入の単位 主な対象例
一人親方等(第一種特別加入者) 施行規則第46条の17 営む「事業」単位で包括的に加入 建設業の一人親方、個人タクシー等
特定フリーランス事業(第一種特別加入者) 施行規則第46条の17第12号 営む「事業」単位 業種を問わない一般的なフリーランス事業
情報処理関連の特定作業従事者(第二種特別加入者) 施行規則第46条の18第8号 届け出た「作業」単位で限定的に加入 システム開発・Web制作等に従事するITフリーランス

一人親方等は事業全体を包括して加入するのに対し、情報処理関連の特定作業従事者はあらかじめ定義された作業の範囲でのみ加入・補償される点が大きな違いです。自分の働き方がどの区分に近いか分からない場合は、特別加入団体や社会保険労務士に相談すると確実です。

よくある質問

Q1. フリーランスエンジニアは労働局に直接申し込めますか?

A. できません。特定作業従事者としての特別加入は、特別加入団体を経由した申請が必須です。個人が単独で労働局へ申請する制度にはなっていません。

Q2. どんな作業内容なら対象になりますか?

A. システム・ソフトウェア・ウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理など、情報処理に係る一連の作業が対象です。動画制作やライティングなど、情報処理に該当しない業務は対象外です。

Q3. 保険料は収入に応じて決まりますか?

A. いいえ。実際の収入額ではなく、本人が希望し労働局長が決定する「給付基礎日額」(3,500円〜25,000円)を基準に計算されます。

Q4. 開業したばかりでも加入できますか?

A. 開業直後でも、対象となる作業に従事していれば加入は可能です。ただし団体ごとに加入条件や必要書類が異なるため、事前に問い合わせることをおすすめします。

Q5. 一人親方の特別加入と併用できますか?

A. 従事する作業内容がそれぞれの区分の定義に当てはまる場合は、区分が異なるため単純な併用にはならないことが多いです。複数の業務を行っている場合は、どの特別加入区分が適切か、加入前に労働局や特別加入団体に確認してください。

出典(一次情報)

  • 厚生労働省「令和3年9月1日から労災保険の『特別加入』の対象が広がりました」
  • 厚生労働省 労働政策審議会資料「特別加入制度の対象範囲の拡大に関する検討事項」(情報処理システムの設計等の情報処理の作業に関する記載)
  • 厚生労働省「特別加入保険料率表」(令和6年11月1日施行)
  • 北海道労働局「労災保険の特別加入制度について」(給付基礎日額・加入手続きに関する資料)

労災保険の特別加入は、フリーランスエンジニアにとって「もしも」のときの備えになる制度です。保険料は決して高額ではないので、加入対象の作業範囲と保険料の仕組みを理解したうえで、信頼できる特別加入団体を選んで検討してみてください。あわせて、確定申告や経費管理などお金まわりの基本も整えておくと、フリーランスとしての土台がより安定します。

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